マスタージャンル





「七人隊」

ある一人の若者が地面にそう書いた。
其の文字は乾いた地に直ぐ溶けていく、さらさらと。
「何だよ蛮骨の大兄貴、この七人・・何とかって奴はよ」
地面に頭を覗き込ませて居た者達の一人が、眉根に皺をよせて問うた。
「俺たちの名前だよ蛇骨、始まりだぜ」
指に付着した砂を振り払い、若者は立ち上がった。
「俺たちは七人で一つ、この世界でたった一つの集団だ。其れ以上でも、其れ以下でもねぇ」
「まーた難しいこと云っちゃって、どうせ其れも何時もの様に煉骨の兄貴が考えたんだろー?

蛇骨と呼ばれた若者が、笑う。すると周りの者たちもつられて笑った。
「蛇骨、余計な茶々入れないで黙って聞いてろ」
頭を坊主にした若者が蛇骨を軽く叩きながら少し笑い、先を促す。
「たく。とにかくいーかぁ?俺たちは今度からこう名乗る。
この名に誇りを持て。俺たちは最強 だ。」


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「最強   ねぇ・・・」
蛇骨は村を一つ全滅させた後、寺のお堂を壊して其の中にどっかりと座り込んでいた。
思い出したように呟き、そしてまた呟く。
そんなことをもう五回は繰り返し・・否、六回だったか?
まーどうでも良いや、と投遣りに持っていっては寝転び、目を閉じる。

最強のはずだった七人隊も 今はもう三人

一度死んで生き返ったのだから、また生前の様に毎日面白可笑しく過せると想ってた。

まぁ其れも一時の白昼夢で、直ぐに夢から覚めたけど。
「俺とー、煉骨の兄貴とー、蛮骨の兄貴。・・はぁ、七人隊なんてもう名乗れないじゃねーかよ」

指を折ったり増やしたりして呟く。

七人隊     この名に誇りを持て。

俺たちは最強  だ

煉骨の兄貴や蛮骨の大兄貴の云うことは、何時だって正しかった。
だけど今は其れが外れて、其れが否定されてる。
其のことが何よりも、俺にとっては悔しかった。
・・・・・・矢張り今も昔も、この世界はくそったれらしい。
一度溜息を付き、寝返りを打ったとき誰かの声が耳に届いた。
「おう、蛇骨。こんな処に居たのかよ」
「・・・蛮骨の大兄貴」
「また派手に殺したもんだなぁー、だから毎回云ってるだろ酌させる女くらい生かしとけって」

何時もと全くかわらない笑みに薄い安心感を覚え、俺は軽く起き上がった。
「にしてもよぉ、どしたんだ?何かあったのか、わざわざ大兄貴が来てくれるなんてよv
「いや、別に暇だからちょっと寄ってみただけだ」
「そーか。・・・あれ、煉骨の兄貴はどうしたんだ?」
一瞬大兄貴の顔が曇ったことに、俺は何故か気が付いてしまった。
「今別行動しててな、もう少ししたら気配を追って来るだろ」
「・・・・へぇ、そうか」

俺たちは

何時からバラバラになっちまったんだろう。
七人で一つ    のはず、だったのに

「どうした蛇骨?急に黙っちまってよ。」
大兄貴。・・・・大兄貴、俺は。
「ん?いや、別になんでも。日差しがあったけーなぁと想ってさぁ」
自分なりに、良い惚け様だと想った。
ってゆーか、惚けるしか俺は方法を知らなくて
「へっ、暢気な奴」
大兄貴はちょっと笑って、大きく伸びをした。
「暢気なのは大兄貴も同じだろー、一緒だ一緒v」
「なんだと、おめぇと一緒にすんな!!」
思わず俺は噴出し、笑った。
こうやって ずっと皆で笑いあっていられたら
・・・・・・きっと毎日、しあわせだったんだろうになぁ。
「おまぇ人の話、聞いてねぇだろ」
ぽかっと頭を叩かれて、やっと俺は気がついた。
「いてっ。・・叩かなくても良いじゃんよぉ~・・」
「たくよー。・・お前さ、らしくなく心配なんてしてるだろ。」
自分の考えを読まれ、ドキッとして大兄貴の顔を凝視する。
「余計なことなんか考えなくて良いんだよ。考えるだけ無駄だって」
大兄貴はすっと指で道を指し示し、俺に笑いかけた。

「来いよ、蛇骨」




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